私好みの新刊 202010

『アラスカで一番高い山』(たくさんのふしぎ20204月号)

石川直樹/文・写真 福音館書店

 冒険家・写真家でもある石川直樹さんのアラスカの登山記録である。石川

さんは、登山家で冒険家でもあった植村直己さん(故人)の著書に感銘を受け、

七大大陸のそれぞれの最高峰に登ってこられたという、生粋の登山家でもあ

る。その石川さんがアラスカで一番高い山、デナリに2回挑戦されている。

その記録をこの本にされた。

 最後の解説文に「同じ山に同じ季節に登っても、山はまるで違う表情を見

せる。山はそこにあっても何も変わらないのに・・」と書いておられる。

この本も、2回デナリに登山されての記録である。

 最初に標高6190mのデナリさんの写真と石川さんの写真が出る。バックは

真っ白なデナリ山が写し出される。高山病に顔もむくれた過酷な状況が見える。

「垂直方向に、空に向かっても未知の世界が広がっていることを教えてくれた山、

それがデナリなのだった。」

と約20年前の記憶を書いている。今回は、再挑戦だ。

 デナリ大草原の写真が出る。氷河から流れ出る水が自由に平野を流れ、グリ

ズリーなど動植物も多い。次に頂上付近の写真が出る。雪に覆われた厳しい山

塊だ。いよいよ氷原の登山口へヘリで運ばれる。ここから、第1,2,3,4

キャンプ場と次々と経由して頂上に登っていく登山計画が作られる。途中には

危険なクレバスも見える。テントの中がイラストで紹介される。吹雪の中、ゆ

っくりと高度を上げていく。「頂上に向かう最後の稜線は両側が切れ落ちてい

るナイフブリッジだ。」と書かれている。いよいよ頂上へ。「生きて、ここま

でこられてよかった。」と感慨深げに語っている。なかなか、普通の登山家で

は味わえない一瞬である。おりしも曇り空、美しいデナリの写真は前回の時の

写真が使用されている。             20204  700

 

『こいぬのルナ、コロナウィルスにたちむかう』

アダムM.ウォレス/作 アダム・リオンぐ/絵 子どもの未来社 

 訳者は、多くの児童書を訳されている上田勢子さん。ご時世がら、コロナウ

ィルスに関する大人対象の本は数出ている。しかし、コロナウィルスは人類初

めてのウィルスなので今進行中、何が正しいのか仮説の段階でもある。今は様

々な意見が飛び交っていて、大人でも右往左往させられる現状である。まして

子どもたちは学校が休みになったり、旅行もままならない現状になって、より

とまどっている。この今の現実について子ども向けの本は皆無なので取り上げ

てみた。作者は、一応アメリカの救急医療技術者なので現実的な話が多い。

 展開は、子犬のルナが人間の二人の子どもたちの様子を見て、コロナウィル

スにも立ち向かっていく過程を想定して描かれている。前半は、二人の子ども

たちと子犬のルナとの平凡な楽しい日常生活。ところがある日異変が起きる。

ルナがいつものようにドアの外で待っていても二人の子どもは出てこない。

家に入ってテレビを見ると、学校へ行く子どもは皆目見当たらない。やがて

お父さんの話が始まる。「あたらしいコロナウィルスのことを、こわがってい

るからだよ」「あんぜんのために、いえのなかにいるんだよ」とおとうさん。

(ここに、COVID-19の意味の説明がある。) この本では、外出禁止令化の状況

を語っている。あとは、手洗いの徹底など、どのようにすればウィルスと闘え

るのか話が続く。なぜか、マスクのことは出てこない。

 後半にくわしい大人向けの解説がある。COVID-19はどこで発見されたのか、

感染しやすい人とそうでない人、細菌とウィルスの違い、なぜ、石けんで手を

洗うといいの? など17項目8ページにわたって解説がある。いちおう、読ん

でおくといいでしょう。             2020 5  1,500

 

           科学読み物10